口座凍結
詐欺被害にあって口座にお金を振り込んでしまった場合、まず考えなければならないのは被害回復手段の確保です。そのための方法の1つとして、口座凍結の手続きを行うというものがあります。
詐欺被害に遭ってしまった場合は?
投資詐欺、利殖勧誘詐欺など、詐欺の手口は年々巧妙化しています。
特にコロナ禍による経済的な不安もあって、近年では副業や投資、情報商材に絡んだ詐欺の被害が増えています。
怪しい儲け話には関わらないのが一番ですが、言葉巧みにだまされて詐欺師に指示された口座にお金を振り込んでしまうケースがあります。
だまされたことに気づいてから相手に返金請求したところで、相手が返金に応じてくれることはまずありません。
しかし、たとえ相手が任意に返金してくれない場合でも、お金を振り込んでから時間が経っていない場合、お金を取り戻すチャンスはあります。
それが、振り込み詐欺救済法に基づく口座凍結要請という方法です。
振り込め詐欺救済法と口座凍結
口座凍結とは文字通り、相手の口座を凍結してお金を引き出せなくしてしまうことをいいます。つまり、詐欺グループが指定する口座にお金を振り込んでしまったとしても、振込先の口座が凍結されてしまえば、少なくとも口座に残っているお金については詐欺グループの手元に渡ることはないということです。
そして、振り込め詐欺救済法では、詐欺などの犯罪に使われた疑いの口座について、簡単かつ迅速な手続きによる口座の凍結や被害回復をはかるための措置を認めています。
口座凍結手続きが行われる場合
次のいずれかのケースに該当する場合、金融機関はすみやかに口座凍結を行わなければなりません。
警察、弁護士などが通報した場合
1つ目は警察などの捜査機関や消費者生活センター、弁護士会などの公的機関、弁護士から通報があった場合です。被害者がこれらの相談先に相談すると、そこから犯罪利用されている疑いのある口座がある金融機関に通報・情報提供が行われます。
本人が直接被害を報告した場合
本人が金融機関に対して直接被害の申し出を行った場合も口座凍結できる可能性があります。金融機関が、振込みが行われたことを確認でき、他の取引の状況・口座名義人との連絡状況から直ちに口座凍結を行う必要があると判断した場合、口座凍結の手続きが行われます。
口座が犯罪に利用されている・利用される可能性がある場合
口座が詐欺などの犯罪に利用されている疑いがあるか、口座が振り込め詐欺等の犯罪に利用される可能性があるとの情報提供があった場合で、次の3つのうちのどれかにあてはまる場合も口座凍結が行われます。
- ・金融機関が名義人本人に確認した結果、口座の貸与や売却などがわかった場合
- ・金融機関が何度電話で連絡しても名義人と連絡が取れなかった場合
- ・当該口座の入出金履歴について、過去の取引記録や一般的な生活口座の取引と比べて不自然な点がある場合
本人確認書類が偽造・変造されたものがわかった場合
口座開設時の本人確認書類が偽造・変造されたものがわかった場合も口座が凍結されます。
口座凍結後の流れ
犯罪に利用されたという疑いのある口座が凍結されると、その口座に関する取引は全部停止されます。
そして、その後は被害者が被った損害を回復させるための手続きが行われることになります。
権利消滅の公告
まず、預金保険機構のHPで、60日以上の届出期間をもうけた上で口座名義人に権利行使の届出を求める公告を実施します。
預金債権の消滅
所定の期間内に権利行使の届出がなかった場合には、当該口座の預金債権が消滅します。
被害者への連絡・公告
被害を届け出た被害者に対して、被害回復分配金支払の手続きに関する連絡が行われます。また、預金保険機構において、被害を届け出た者の他に存在する可能性がある被害者のために公告が行われます。
被害者からの支払申請
被害者は金融機関に対して被害回復分配請求金の支払申請を行います。
被害回復分配金の支払い
凍結された口座に残ったお金から、被害金額に応じて被害回復分配金が支払われます。ただし、実際に支払われるお金は支払いを申請した被害者の人数や口座残高によって左右されるため、被害額の全部が返ってくるとは限りません。
被害にあったと思ったらすぐに相談を
口座凍結の手続き~被害回復分配金の支払いに至る一連のプロセスによって被害額の一部が返ってくる可能性があります。しかし、犯人グループが口座からお金を引き出してしまうと口座を凍結する意味がなくなりますので、被害にあったと気づいた段階でできるだけ早く口座の凍結手続きを行うことが大切です。
詐欺被害にあったかも、と感じた段階で早めにご相談いただければと思います。